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・・・さん。

以前ちょっとした原稿を依頼されました。

その時、文中に記載した、当時勤務していた事務所の後輩の名前に、
「・・・さん」と付けて、「・・・君」ではと云われたことがあります。

世間一般では、先輩には「・・・さん」。
後輩には「・・・君」らしい。

けれども、僕の勤めた増沢事務所では、
先輩後輩に関わらず、皆「・・・さん」と云われていました。
僕も増沢さんから、坂田さん・・・。



ちょっと横道に逸れます。


最近の傾向として、建築設計をしている人達は、
著名な建築家の名前を呼び捨てにします。

丹下健三さんは丹下。
吉村順三さんは吉村。
清家清さんは清家。


ちょっと古参の大御所ばかりですが、
建築家の名前を「・・・さん」付けで云わない傾向にあるのです。

丹下さんはともかく、吉村さんや清家さんを、
「・・・さん」付けしないで云うのは何とも気が引けます。


建築設計者としての、一人の人間を見つめる眼が欠如し、
その設計者の仕事、建築の形のみに眼が奪われている気がしてなりません。


建築というのは、その人の価値観、考え方が如実に表れる世界です。
設計者自身を理解せずして、その建物を理解するのは不可能とも云えます。


世間の建物をある範疇で括ると、似たような建物は幾らでも有ります。
けれども、その中に何だか違う気品と趣を湛えた建物が有ります。
こうした建物は設計者自身の内面が表出された、
物としての建築を超えた、設計者自身の思想が其処に感じられるものです。


お会いしたことは有りませんが、
吉村順三さんの建築は、「吉村」ではなく、吉村順三さんの建築。

増沢さんの建築は、増沢さん以外の何者でも有りません。
by a-kashi | 2006-03-02 23:46 | 暮らし | Comments(0)