2005年 05月 12日
ありがたい
雑談をする中、彼はそう呟いた。
「ありがたい」
その言葉が妙に印象に残った。
彼は30代後半。
農業に携わっている。
元々はサラリーマンだったというが、全国各地を放浪し、
今は畑を耕している。
僕からすると、住まいの設計を依頼してくれた御家族のご主人だ。
彼は海老芋、葱などを育てている。
丁度今は、海老芋の苗の植え付けで忙しいそうだ。
今日も日中は苗の植え付け作業。
そして夕方から少しまとまった雨が降った。
植え付けた苗にとっては、本当にありがたい雨。
「ありがたい」
「ありがたい」
自然を相手に、農に携わる彼からの言葉。
雨が降ることを、ありがたいと素直に感謝する。
ある時は、晴天が続くことを素直に感謝する。
時には風水害に会い、自然の営みに苦することも・・・。
雨が降ることを「ありがたい」と素直に感じる心。
僕の心の中からは消えかけているかもしれない。
彼にとって、雨が降るのが嬉しいのではなく、ありがたいのだ。
帰り際、打ち合わせを終え階段を降りる僕に、彼はいつも声を掛けてくれる。
「今日は、ありがとう」
僕は何だか照れくさくて、「さようなら」と返す。
心の中では、小さく・・・ありがとう。
by a-kashi
| 2005-05-12 22:33
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